右脳の解放

スポーツサイエンティスト,衣笠泰介が日々感じること,感動した言葉,音色,風景などを思いのまま綴る. Think globally, act locally

[http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100903ddm035050075000c.html:title=インサイド:ユース五輪 未来への礎/4 トップ派遣、各国で差@毎日]

 米国はユース五輪(シンガポール)での成績不振に危機感を抱いている。従来の五輪では国・地域別の金メダル数でトップ争いを演じてきたが、今大会の金メダル数は4個。トップの中国(30個)に大きく水をあけられ、全体でも12位と低迷したからだ。教育や交流を重視する大会の趣旨に照らせば、メダルの数を気にする必要はない。しかし、シンガポール最大の英字新聞「ストレーツ・タイムズ」によると、米国オリンピック委員会の強化担当者は「今後はユース五輪の位置づけを高め、プランを修正していく」とコメントした。

 ■米は他大会を優先

 真夏に開催された新設大会は、複数の競技で他の国際大会と日程が重複した。トップ選手の参加が危ぶまれ、「二流選手のサマーキャンプになるのでは」との見方さえあった。特に競泳はジュニア・パンパシフィック選手権(米国・ハワイ、8月26〜30日)を重視する向きが強かった。ユース五輪の競泳は8月20日に終了したが、選手は26日の閉幕まで選手村への滞在を義務づけられ、両大会の掛け持ちはできなかった。米国のトップ選手はジュニア・パンパシを優先し、過去の五輪で金メダルを量産した競泳は、ユース五輪で金メダル1個と苦戦した。

 今大会は、競泳の自由形やリレー種目で計6個の金メダルを獲得した中国の唐奕(17)、体操女子個人総合で圧勝したロシアのビクトリア・コモワ(15)、「次世代のボルト」と呼ばれ、陸上男子百メートルを制したジャマイカのオデイン・スキーン(16)ら才能豊かな選手が数多く出場した。

 一方、サッカーなど一部競技はトップ選手が参加しなかった。国際オリンピック委員会ジャック・ロゲ会長は「サッカー選手の派遣方針について、国際サッカー連盟と協議したい」と話す。

 ■日本も調整に苦慮

 日本水泳連盟も「(ユース五輪は)手探りの大会で、選手に参加を強制できない」と判断。全国高校総体など国内大会の日程とも重複する事情を踏まえ、選手の希望を最優先に代表を選んだ。結果的にトップ選手の多くは参加しなかったが、将来を見据えて決断した選手もいた。男子二百メートル個人メドレーで8位に入った堤貴大(17)=兵庫・市川高=は「インターハイ(全国高校総体)が僕の最終目標じゃない。次へのステップになる」と力強く語った。

 国内では、女子バレーボールの代表選考も苦労した。5月にアジア予選を勝ち抜いたトップ選手は千葉国体の予選出場などのため、誰も今大会に参加しなかった。日本は国体予選を免除された千葉県選抜で出場。大柄な外国選手を相手に健闘したが、結果は4位。チームに同行した日本バレーボール協会の成田明彦強化事業本部長は「一時は選手の派遣辞退も考えました。でも、選手には貴重な経験になったし、行って良かった」と語った。今大会は17、18歳の選手が出場したが、成田本部長は「高校1年の選手を中心にチームを組めれば、選手を出しやすい」と出場年齢の変更を希望している。

 米国の態度が変化したように、日本オリンピック委員会関係者は「今後はさらにトップ選手が集まる大会になる」とみる。各国の対応が分かれた第1回大会。ユース五輪の理念である教育、交流を重視しながら競技レベルをどう保つか。夏場は世界のスポーツカレンダーが埋まっている。大会日程の問題も含め、課題は多い。【井沢真】=つづく