右脳の解放

スポーツサイエンティスト,衣笠泰介が日々感じること,感動した言葉,音色,風景などを思いのまま綴る. Think globally, act locally

[http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100902ddm035050064000c.html:title=インサイド:ユース五輪 未来への礎/3 浸透した「交流重視」@毎日]

 選手間の交流を促すユース五輪(シンガポール)で、選手に好評だったプログラムは、近隣の島で冒険体験をする「アイランドアドベンチャー」だった。


自分たちで作ったいかだをこいで交流を深める選手たち=長谷川直亮撮影
 舞台は、シンガポール北岸から船で10分程度のウビン島。選手は国籍や文化、宗教の違いを超えて15人程度のグループに分かれて活動した。ドラム缶などを使って即席のいかだ作りに励み、海へとこぎ出すと歓声が沸いた。1日の定員は144人だったが、選手の希望が殺到して200人が参加した日もあった。

 ■語学の壁歯がゆさも

 先月22日には、日本からテニスの男女3選手が参加。プエルトリコ、アルゼンチン、スペインなどの11人と親交を深めた。米国留学経験があり社交的な性格の牟田口恵美(16)=JITC=は「同じグループの選手はスペイン語ばかり。英語が通じなかった」と少し残念そうだったが、英語を勉強中という石津幸恵(17)=茨城・土浦日大高=は「外国の選手と話すのは面白いし、みんなフレンドリーで楽しかった」とすがすがしい顔をのぞかせた。

 確かに「語学の壁」はある。自転車競技男子の山本兆(いどむ)(18)=ダンガリー=は「みんなもっとストイックな人たちかと思ったけど、友好的で心を開くことができた」と笑ったが、「僕の英語はボディーランゲージ程度。もっと話せたら本当の交流ができるのに」と歯がゆさも感じていた。外国選手にも英語が話せない人が多く、フランス語、スペイン語のみの選手も目立った。

 ■国籍を超えた競技

 だが、言葉の違いを乗り越えた「交流重視」の姿勢は競技にも浸透していた。トライアスロンや陸上、競泳、アーチェリーなどで大陸別や男女混合のユニークな種目が実施された。フェンシングは政治的に対立する米国とキューバの選手が同じ「アメリカ大陸チーム」でプレーし、話題を呼んだ。

 特に目を引いたのは、柔道の混合団体戦だ。過去の世界選手権開催地の名前を取って、12チームを編成。戦力が均等になるように、今大会の男女8階級のメダリストを割り振り、同一国・地域の選手が同じチームにならないようにも配慮した。メダリストではない選手も含め、1チームは7〜8人。女子63キロ級優勝の田代未来(16)=東京・淑徳高=はチーム「エッセン」(ドイツ、87年開催地)のメンバーとなった。準々決勝で男子100キロ級優勝の五十嵐涼亮(17)=東京・国士舘高=を擁した「千葉」(95年開催地)を破り、そのまま優勝。試合中はスペインの男子選手と一緒に声を振り絞って応援した田代は「みんなで『ファイト! ファイト』って声を出し合い、いい雰囲気で戦えました」とにこやかだ。

 チーム戦では、多くの国の選手たちが初めて表彰台へ上がった。エッセンのメンバーで、個人戦では男子81キロ級で早々と敗退したコンゴ共和国の選手は全4試合で一本勝ちした。「金メダルを取ったのは初めて。友人もたくさんできたし、みんなと五輪で再会できればいいなと思う」と感慨に浸った。

 柔道混合団体の表彰式に、国旗、国歌は存在しなかった。本来は開閉会式に流れる五輪賛歌をバックに、4本の五輪旗が掲げられた。優勝、準優勝、3位の2チームの選手30人は表彰台で身を寄せ合うように並び、胸を張った。【井沢真】=つづく