右脳の解放

スポーツサイエンティスト,衣笠泰介が日々感じること,感動した言葉,音色,風景などを思いのまま綴る. Think globally, act locally

[http://mainichi.jp/enta/sports/archive/news/2012/02/08/20120208ddm035050006000c.html:title=インサイド:ロゲが目指した五輪 ユース大会に見る未来像/2@毎日]

◇五輪精神の拡大目指し
 冬季ユース五輪アルペンスキー初日。男子スーパー大回転で優勝したのは、モロッコの選手だった。カナダを活動拠点に実力をつけ、金メダルを手にしたアダム・ラムハメディは「アフリカ人でもスキーができると証明したかった」と胸を張った。

 その3日後の1月17日、アルペン会場を視察し、各国メディアとの昼食会に臨んだ国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長には、アフリカメディアの女性記者から単刀直入に質問が飛んだ。

 「アフリカで五輪は開催できるのでしょうか?」

 ■商業主義で招致活動し烈に

 五輪の「五つの輪」には、世界の五大陸がスポーツを通して結ばれるとの意味が込められている。だが、アフリカ大陸で五輪が開催されたことは夏、冬通じて一度もない。東京も立候補している20年夏季五輪招致で当初は、南アフリカも意欲を示していたが断念。ロゲ会長は「アフリカで開催することは不可能ではない。20年はダメだったが、24年以降によい立候補都市が現れることを期待している」と述べた。

 20年夏季五輪招致に立候補した都市は東京、ローマ、マドリードイスタンブール、ドーハ、バクーの6都市。13年9月のIOC総会で開催都市が決定するまでし烈な争いが展開される。だが、招致活動はいつの時代も盛んだったわけではない。第5代会長だったアベリー・ブランデージ氏(75年死去)はアマチュア主義に徹し、五輪からプロ選手と商業主義を排除した。その半面、大会規模は年々拡大し、開催都市の負担は増加。76年モントリオール五輪は大赤字となったこともあり、84年夏季五輪の立候補都市はロサンゼルスただ1都市という事態に陥った。

 テレビ放映権料やスポンサー収入などの商業主義で成功を収めたロサンゼルス五輪以降、五輪招致は再び活発になる。それに並行して、投票権を持つIOC委員の買収スキャンダルも発生。IOCは、02年ソルトレークシティー冬季五輪招致で不正にかかわったIOC委員を追放処分にし、委員の立候補地訪問を禁止した。

 ■小規模、低予算で開催可能

 第1回大会となった今回の冬季ユース五輪の予算は2250万ドル(約18億円)。一方、冬季五輪は14年ソチ大会や18年平昌大会でともに約15億ドル(約1200億円)が見込まれ、それに比べれば破格ともいえる低予算。参加選手も約1000人に抑えられた。開催地のインスブルック(オーストリア)は64年、76年と2回の冬季五輪を実施しており、既存施設も多い。次回開催地のリレハンメル(ノルウェー)も似たような状況だ。

 日本オリンピック委員会の市原則之副会長兼専務理事が「この規模の大会ならどこでも開催できる」と指摘するように、財政基盤に恵まれない国の都市にも開催のチャンスがあるといえる。IOCが推し進めるオリンピック・ムーブメント(五輪精神を広める運動)の拡大。そのために、既存の五輪とユース五輪で開催都市をすみ分ける時代が来るかもしれない。=つづく