右脳の解放

スポーツサイエンティスト,衣笠泰介が日々感じること,感動した言葉,音色,風景などを思いのまま綴る. Think globally, act locally

シンガポールスポーツスクールでの6.5年間を振り返って

本日で6年半働いてきたシンガポールスポーツスクール(SSP)を退職する.思えばオーストラリアのクイーンズランド大学でPhDを取得し,2004年のアテネ五輪の開催中に始めてシンガポールの地に足を踏み入れた.働く環境として全くの新しい学校であったこと,シンガポールの公用語が英語だったこと,自分でラボを立ち上げられることがシンガポールで働く大きな原動力となった.SSPでのスポーツ生理学者として6.5年間を振り返って,具体的に何をしたかを挙げてみる.
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  • コーチとの関係性を築くこと(SSPには世界各国からコーチを雇用しているので,文化の違い,コーチング哲学の違いを理解するのに時間がかかった)
  • SSP エビデンスに基づいた長期競技者育成計画(LTAD)モデル確立へのデータ収集(体力要因のトレーナビリティについて分かってきた)
  • Sports Performance ラボの立ち上げ
  • ユース選手を対象にした測定評価マニュアル作成(新たにサッカーのアジリティテスト,バドミントンの持久力テストを開発)
  • ユース選手の体力基準の作成
  • ユース選手の生物学的成熟度測定法の確立(成長モニタリングソフト及び成長予測ソフトの開発)
  • ユース選手の生物学的成熟度を考慮した体力測定評価法の確立
  • スポーツ生理学カリキュラムの作成
  • 北京五輪や広州アジア大会における競泳サポートプロジェクト
  • YOGにおける情報戦略活動の立ち上げ
  • 高地トレーニングサポート体制の確立
  • 疲労対策とリカバリー手段の確立(疲労の指標を明確にした上でiCoolやシャワーを用いた交代浴やクーリングダウンなどの手段のオプションを広げる)
  • リカバリーセンター構想(実際には立ち上がらなかったが,リカバリーの機能は確保した)
  • 研究活動(ユース選手の体力発達度,リカバリー,ラマダン,免疫指標)

などなど.

挙げればきりがない.一番大きいのは,YOGなどを通して多くの方々にSSPを訪問して頂いたこと.何度SSPのガイドをしたことか.スポーツ専門家,専門外の方々にお会いでき,新たなネットワークを築くことができた.そういえばペレ,カントナ,ポポフ,ロゲ,ブブカ,エディンバラ公,ナザンシンガポール大統領,文科省やJOC関係者などもSSPに来て頂いたな.

こうした中,2004年から2010年までで2人のオリンピアン,4人の世界チャンピオンを輩出したことはSSPの大きな成果だろう.このSSPでの年月は自分のスポーツ科学者としての基礎となっていくだろう.自分の夢でもあったこのオリンピアンへのサポートを本格化するため,来年へのロンドン五輪のため,明日から新たな職場へと転職をする.その転職先についてはまた詳しくブログにアップする.