右脳の解放

スポーツサイエンティスト,衣笠泰介が日々感じること,感動した言葉,音色,風景などを思いのまま綴る. Think globally, act locally

YOGのレガシーをどう残していくのか

12月12日第33回JOAセッションにシンポジストの一人として講演した.講演の要旨は以下の通り.

今年2010年8月,シンガポールにおいて第一回夏季ユース五輪(以下YOGとする)が開催された.YOGの一番の特徴は若者へ多岐の文化·教育プログラム(以下CEPとする)が行われたことだ.CEPはIOCの実験的試みであり,50を越す楽しくインタラクティブなプログラムが用意された.結果的にYOGは「競技,文化,教育」の均整のとれた国際イベントとなったが,その背景には「競技の場というより,オリンピック教育を重視したい」という IOCロゲ会長の強い思いがあった.


IOCが2007年7月5日にYOGの構想を打ち出した同年10月7日,シンガポール首相のリー・シェンロンは,ユースオリンピックの誘致について「極めて重要な試み」と発表しユースオリンピックの招致に乗り出した.シンガポール政府は,ユースオリンピックを通じて,世界中の有望なユース世代のアスリートが集まり,オリンピックの理念である多様性,友情,将来への希望を唱える最高の機会と捉えていた.


シンガポール国民の関心が一ヶ月前になってもなかなか盛り上がりを見せなかった中で,YOGが始まると次第に関心ある国民が増えていったのを肌で感じた.今回僕自身はYOGにおいてシンガポール競泳チームの科学サポートをしてレース分析をしたり,他の強豪国がYOGにどういった準備や科学サポートをしたかなどの情報収集を行うインテリジェンス活動をした.そうした中,YOGの競技のフォーマットも大陸別や男女混合リレーなど国や性別を越えて行われ,IOCの目指す理想のオリンピック像が垣間見れた.そしてYOG閉会式後ではロゲ会長が「シンガポールのYOGは今まで参加したオリンピックの中でベストなオリンピックであった」と発言し,YOGがオリンピック史の新しい一ページを如実に刻んだことを示した.こうした時流の中,みんなでJOAがいかにこのオリンピックムーブメントの変遷に乗っていくかを考えていきたい.

講演の最後に僭越ながらJOAの方々にYOGのレガシーをどう残していくのかについて3つの提言をした:
1.今回YOGに参加し「ヤングオリンピアン」の称号を得た競技者が若者のロールモデルとして,次世代のリーダーとして,積極的に活躍すること.例えば青年向けのJOAセッションでヤングオリンピアンが親善大使,ファシリテーターとしてセッション運営をサポートしたり,同世代の子供たち,親,家族にオリンピックムーブメントに広げてほしい.

2.FacebooktwitterYoutubeなどのソーシャルメディアを有効利用すること.YOG開催中にYOG公式のFacebookに350万人の13歳から24歳までの若者が参加したとされている.

3.JOA主催のユースカンファレンスやユースキャンプを通して様々なCEPを行い,イノベーティブで楽しい良いプログラムが模索し,将来のYOGのCEPのアイデアをIOCに提言していく.

この他に,猪谷JOA会長は今後の4つの課題として以下を挙げている:
1.若者にアピールできたか
2.競技種目あるいは競技数が妥当であるか(もっと若者に人気のスポーツを取り入れたほうがいいのでは
3.YOGの予算は妥当だったか
4.日本のメディアへのアピールをもっと積極的にする(YOG参加国で日本だけ放映権を獲得していない

これらの課題をどう解決していくか.僕のライフワークであるオリンピックムーブメントの課題でもある...